白金コラム
2025年4月18日(金)更新
2025年5月に発表されるJM社のレポートでもWPIC同様供給不足が指摘されるか?
田栗満 (岡地アナリスト、日経CNBC出演、週刊エコノミスト寄稿)

トランプ大統領が4月3日に相互関税を発動し、市場は不確実性が高くなり、米国市場から流動性資金が逃避する動きを強めると、米国長期債の金利が上昇し、米国の信用度が低下する事態を生み、株安・ドル安・債券安のトリプル安の動きを見せている。
特に景気商品である白金価格は、NY市場で1031.5ドルから878.3ドルまで下値を模索している。ただ相互関税の発動から13時間後には、90日間の相互関税の発動を延期し、米国売りの動きにトランプ大統領も警戒を見せている。
また半導体の関税も一時的に停止を発表し、医薬品同様に通商拡大法232条に基づき調査を指示する大統領令に署名している。
特にNY白金は、一時878.3ドルまで下値を模索したが、関税の発動が後退し、リスク緩和に伴い973ドルまで戻りを見せている。
しかしトランプ大統領は、重要鉱物への関税の必要性について調査開始を指示する大統領令に署名し、世界経済の主要セクターを標的とした貿易戦争の拡大を意味している。
大統領令では通商拡大法232条に基づき、商務長官に「こうした鉱物の輸入が米国の安全保障と耐久性に及ぼす影響の評価」を開始するよう指示している。
ただ第2期トランプ政権はカナダやメキシコには国境に対する非常事態宣言を発動し、大統領の一任で制裁が可能になる方法を採用しており、今回の通商拡大法232条に基づく調査を指示した事は、米国売りに繋がる過激な関税発動を回避している雰囲気であり、トランプ大統領が市場に対する警戒感を気にしている動きに思える。
また貴金属に関税を課す思惑は外れ、貴金属は相互関税の対象外となった事からロンドン市場からNY市場へ関税要因で現物が移動していたが、相互関税発動後はCOMEX金やNYMEX白金の指定倉庫から現物が減少している。
特に関税発動を機に中国は対抗手段として自国通貨を安くする処置を行い、人民元は対ドルで売られている。そのため上海黄金取引所の元建て白金価格をドル建てに換算するとロンドン市場の白金価格を60ドル上回るプレミアムが発生するなど、値上がりの要因が示されている。
そのため関税が非常事態宣言を基に大統領令を発動するやり方から、通商拡大法232条を基に270日以内の調査を行う動きへ変更しており、トランプ大統領は市場のリスクに配慮している。
特に5月13日はWPIC第1四半期PGM時給報告や第3週にロンドン・プラチナパーティーでJM社のPGM市場レポートが発表される予定である。
そのためWPIC同様にJM社も供給不足を指摘する内容になると、NY白金は1000ドルを超えて1050ドルを試す値動きに結び付くと思える。
また白金標準先物の週足で示す相対力指数の高値と高値を結ぶサポートラインを相対力指数が上回る事が示された場合は、昨年3月の様に価格が上昇へ変化する可能性は高まると思え、注目に値するオシレーターの動きに思える。