白金コラム
2025年5月12日(月)更新
5月に発表されるJM社 PGMレポートの需給予測に注目
田栗満 (岡地アナリスト、日経CNBC出演、週刊エコノミスト寄稿)
白金週足

毎年、5月にロンドンでプラチナウィークが開催され、JM社(ジョンソンマッセイ)がPGMマーケットレポートを発表する。昨年は5月16日~20日まで開催され、JM社のPGMマーケットレポートでは2023年に続き2024年も18.6トンの2年連続の供給不足を予想していた。
特に世界の7割近くのPGMを生産する南アフリカでは、プラチナ鉱山がロジウムやパラジウムの価格低下の悪影響を受け、コスト割れの状態がほとんどであり、プラチナ供給が増加する可能性は乏しい状況である。
またロシアのウクライナ侵攻で、ロシア産プラチナは西側諸国の自動車会社などは購入を拒絶するなど、今年も供給不足を回避する事は難しく思える。
また12日にはWPIC(ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル)が2025年第1四半期PGM需給報告を発表する。3月に発表した第4四半期PGM需給報告では2025年は26トンの供給不足を予想し、3年連続の供給不足を指摘し、地上在庫では2024年に23%減、2025年も25%減少し、需要の4ヶ月分に満たない171トンと予想するなど着実に減少している。
そのためJM社の3年連続の供給不足予想にWPICの26トンを上回る供給不足が指摘される様であれば、関税問題で価格が抑えられた値動きを見せている白金価格は、見直し相場へ移行する可能性が高く、NY市場で1000ドル、日本市場では4500円を試す値動きが起こってもおかしくない。
特にトランプ大統領は、相互関税の貿易協議で進展している事に言及し、米中の関税問題でも中国も軟化した態度を示している中で行われた米中貿易協議では、「著しい進展」があったと発表し、中国の何立峰副首相は今回の協議を、両国の相違解消に向けた「重要な第一歩」と位置付けるなど、米中の関税リスクが目先ピークを打った可能性は否めない。
そのため景気商品に対するリスクが後退しており、需給報告における供給不足が増加傾向を示す様であれば、5000円へ向けた回帰相場が始まると思える。
特にオシレーターで示す白金標準先物の相対力指数(9週)で従来の下降ラインを相対力指数が上回る直前であり、下降基調が転換した予兆との見方が出来る事からオシレーターからも強気相場へ移行したと思われる。