白金コラム
2026年6月29日(月)更新
7月は金融相場から需給相場へ移行・・
田栗満 (岡地アナリスト、日経CNBC出演、週刊エコノミスト寄稿)
国内白金 週足

ケビン・ウォーシュ氏が17代FRB議長に就任し、初めてのFOMCが開催されたが、2月28日に勃発したイラン戦争の悪影響を受けたエネルギー価格の上昇は、FRBの2大責務である最大限の雇用と物価の安定(インフレを2%以下に抑える)を脅かす要因となり、3月のFOMCにおける経済予測では、FOMCメンバーの利上げ予測は皆無であったが、6月17日に開催されたFOMCでは、12名のメンバーのうち9名が年内利上げを示唆し、また前回の6名の利下げ示唆が1名へ減少するなど、一転してタカ派の印象を与える会合となっている。
そのため「金利を生まない金」にとって投資妙味が欠ける要因へ結び付き、3月まで金相場に強気の姿勢を見せていた投資銀行のゴールドマンサックスが米イラン紛争によってエネルギー価格が急騰し、金融引き締めの期待が高まり、金の魅力を損なうシナリオから、年末の目標価格を5400ドル/オンスから4900ドル/オンスに引き下げ、またドイツ銀行も今年第3四半期の金平均価格がインフレと高金利への懸念を受け4300ドル/オンスになると見込みとし、当初の予測より22%下方修正している。
また中国の香港経由の金輸入総量は4月の99.327トンから5月に65.562トンと前月から約34%減少している。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のデータによると、金を裏付けとするETFは5月に16トンの純流出を記録し、6月前半も流出が続いている。
そのためNY金はドルの上昇や金利が高止まりするとの観測から、心理的に重要な節目水準の1オンス=4000ドルを昨年11月以来初めて割り込んでいる。
その影響は、貴金属である白金価格にも悪影響を与え、先週にNY白金は一時昨年11月26日以来の1547.4ドルまで下値を試している。特にFOMC以前の16日の高値1826ドルから7日間連続で下落するなど、急速な利上げ憶測を織り込む動きを見せている。
しかし5月にロンドンで開催された「ロンドン・プラチナウィーク2026」では、JM社、WPIC、メタルズフォーカスの代表3社が揃って2026年のプラチナ需給報告で供給不足を指摘し、3年連続の供給不足を指摘している。
また7月6日から4日間、中国の蘇州で「上海プラチナウィーク2026」が開催されるが、中国は現在進行中の第15次五カ年計画の一環として、AI、水素、環境保護、炭素削減の構造的変革を加速させており、これらの国家的優先事項を支えるPGMは、重要かつ戦略的なものとして強化されて来ると思われる。
特にAIの発展でデーターセンターの建設が不可欠である様に、データーセンタには大量の半導体が必要となり、PGMの需要が11トン増加される事が予想されるなど、現在の供給不足を押し上げる要因となる可能性が高くなると思われる。
特に金価格の上昇でプラチナは宝飾需要で世界的な恩恵を受け、中国では2025年のプラチナジュエリー製造が56%増加し589000オンス(18.2トン)となり、一方、金ジュエリーの需要は25%減少している。また世界で最も一人当たりのプラチナジュエリー市場である日本でも、2025年にプラチナジュエリー需要が2%増加し、小売販売で28%に増加したが、金ジュエリー需要は11%減少している。インドでも2025年にプラチナ製造は4%増加し28万オンス(8.6トン)となるも、金ジュエリー需要は24%減少している。
そのため一時的な金融要因で昨年11月以来の安値まで下値を模索しているが、需給に立ち返れば、昨年11月の価格水準まで下げる根拠は乏しく、再度NY白金で1800ドルを超える水準まで戻してもおかしくなく、白金標準先物も4桁から5桁の水準まで戻りを行って来る可能性は高まると思える。
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